緑茶、ウーロン茶、紅茶を同時に家庭で作る方法

今年も新茶のシーズンがやってきました。そしてお茶作りです。

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見た目は同じようですが実際は、色が微妙に違います。左側のほうが緑色です。

左から発酵度の低い緑茶。台湾の包種茶に近い釜炒り茶。

真ん中が中程度発酵させた半発酵茶。ウーロン茶です。

右が完全発酵茶。いわゆる紅茶。

お茶の種類は違いますが、全て同じお茶の木からできています。茶葉の加工をすこし変えるだけで、緑茶、烏龍茶、紅茶を作ることができます。

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まずは、お茶摘みをします。機械がないのでもちろん手摘みです。一芯二葉(葉っぱ二枚と芽ひとつ)で摘み取ります。摘み取った葉を籠などに広げ萎凋(しおらせる)させます。途中で少し掻き混ぜながら様子をみて6時間から12時間くらい置きます。ちなみに緑茶は萎凋させないで殺青(発酵を止める)してしまいます。

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お茶の良い香りがしてきたら茶揉みを始めます。この時のお茶の香りはさわやかでとても良い香りです。この萎凋の香りは、お茶作りをしている時にしか嗅ぐことができません。

①釜炒り茶(緑茶)

萎凋中に良い香りと思った時にホットプレートで殺青します。ホットプレートに油を引かず、野菜炒めを作る感じです。熱くなったところで取り出し、柔捻(揉む)します。手が痛くなるまで揉みます。再びホットプレートで熱し、取り出し飽きるまで揉みます。最後に、ホットプレートで乾燥させ出来上がりです。

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②半発酵茶(ウーロン茶)

萎凋が終わったら、手が痛くなるまで揉みます。頃合を見計らってホットプレートで熱します。もう一度、揉んでから乾燥させます。

③発酵茶(紅茶)

萎凋が終わったら、半発酵茶と同じように手が痛くなるまで揉みます。このあと発酵させます。クーラーなどの容器の中に湯飲みに熱湯を入れ30分くらい置きます。又は発酵機能がある電子レンジで発酵させます。そしてホットプレートで乾燥させます。最後に熟成させます。1ヶ月~3ヶ月ほど寝かして出来上がりです。

お茶作りも、3年目にしてやっとまともになってきました。最初に作った時は、ビギナーズラックで美味しくできたのですが、その後は青臭さが残り一度飲んだだけでやめました。今年のお茶は、初めて美味しいと思えるものができました。自己満足ですが。

紅茶は、熟成させてからなので、まだ味わっていませんが楽しみです。

出来上がりの量が少ないので少し機械化してみたいです。特に揉むとこ。

 

和紅茶のカリスマ村松二六氏3ヶ月連続の偉業達成

雑誌「現代農業を」見ていたら村松二六氏の記事が出ていました、

なんと3ヶ月連続です。

現代農業3月号 【べにふうきの極意(前)】定職後3年の管理で一生が決まる

現代農業4月号 紅茶品種 【べにふうき栽培の極意(後)】

現代農業5月号 花粉用のべにふうき茶 釜炒り製法で

なんと3ヶ月連続の掲載です。惜しみも無く極意を伝授しています。全てを読破すればべにふうき釜炒り茶の達人になれます。特に5月号の釜炒り製法は必見です。

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数時間、萎凋(茶葉を広げ萎らさせる)してから蒸さずに、台湾製の釜炒り茶の機械で火を入れ乾燥させて作ります。

パッケージの「包種茶」とは、台湾北部の文山地区で作られる発酵度の低い烏龍茶のことです。紙に包まれ出荷したことから包種茶と呼ばれています。

包種茶は現在では台湾でしか作られていません。台湾で作られているので烏龍茶に分類されていますが、萎凋された釜炒り茶と言って差し支えないと思います。

10年以上前に、台湾の友達にお茶を飲ませてもらいました。包種茶とは知らずに飲んだとき「なんて美味しいお茶だろう」思いました。その頃は、お茶にあまり興味が無くお茶の名前も聞こうとしませんでした。10年近くたった後で、中国茶ブームで台湾の凍頂烏龍茶が有名になり、飲んでいました。その時、「そういえばあの時に飲んだお茶は何だろう?」と思ったら、香りが鮮明に蘇り、どうしても飲みたくなりました。色々と飲み漁りやっと、たどり着いたのが包種茶でした。その時は本当に歓喜しました。お茶の世界に嵌ったきっかけです。

べにふうきは、花粉症に効くメチル化カテキンが多く含まれるので栽培面積が増えました。蒸し緑茶だと苦くあまり美味しくありませんが、釜炒り茶にすると、引き立つ香りが素晴らしく美味しく飲めます。紅富貴は紅茶品種なので紅茶にしても美味しいのですが、メチル化カテキンはなくなってしまいます。釜炒り茶ですとメチル化カテキンの量も減らないようなので、花粉症の為に蒸し緑茶の紅富貴を我慢して飲むより、美味しい釜炒り茶を飲みましょう。残念なことは、釜炒り茶は生産量が少なく市場にあまり出回っていないので手に入り難いことです。

どなたか作っていただけないでしょうか?指導はできませんが、作り方から機械まで紹介いたします。

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村松二六さんの「紅富貴の釜炒り茶」は、本当に香りが良く台湾の包種茶にも引けをとりません。

 

消費者がお茶を選ぶ基準はなにか

なぜ高級茶が売れないのか?ヒントになる記事があったので紹介します。

値下げする吉野屋、値上げするマック

日本のスーパーマーケットに行くと違うブランドの同じ商品が並んでおり、それぞれ価格が違います。どれを選ぶかといえば、私は商品知識がないので価格が一つの選択肢になることは間違いありません。もし、商品の価格のところに名刺サイズ程度の商品説明なり、セールストークの一言があればその判断基準は違ってきたと思います。つまり、消費者の立場からすればどれを選んでよいかわからないから価格で選ぶ、という人は少なくないと思うのです。

 

バンクーバーの酒屋は州政府直営店が多いのですが、その巨大な酒屋の主たる商品はワイン。ワイン好きならともかく、たまにしか家で飲まない私など膨大な数のワインを前にただただ迷うだけです。その時、唯一の助けになるのがところどころに貼ってあるプロの評価、あるいは、評価機関が行った評点が表示されていることです。結果としてそれらを参考に適当なワインを買うことになり、全くセールストークのないワインを手に取ることはかなり少ないのです。

 
正直、面倒くさいのです。

 

中華料理店にグループで行って「注文係」になると数ページにわたるメニューから皆が満足する5,6品を選ぶのは実に大変な作業なのです。だから、人は考えることを拒否し、いつもと変わったものを選ぶのを面倒くさいと思うのかもしれません。

 

吉野家にしてもマクドナルドにしても当たり前の店なのです。行く人は行くし、行かない人はまず行かない、という前提に立てば、行かない人を取り込む努力をすべきなのかもしれません。つまり、両者ともにいえるのは過去、価格をいじりすぎた、つまり、価格をマーケティングツールにしすぎたのです。行く人にとってみれば牛丼が380円でも280円でも行くのです。しかし、興味ない人は280円でも行きません。新たな客を取り込む努力とはブランディング戦略から入らねばなりません。

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ワインを選ぶ基準は何でしょうか?

自分は、ワイン通ではないので特別な場合を除いて通常1000円位で美味しそうな雰囲気があるものを選びます。なぜ1000円なのかと申しますと500円程度の物は、当たり外れがある。1000円超えたら日本酒も視野に入りますので。

1000円程度のワインでも飲みきれない程の種類があります。いまだにリピートするワインには出会っていませんから。早い話、ワインは良く解らないということでしょうか。まあ、セブンイレブンの598円のヨセミテロードで満足していますから。

お茶もワイン同様、良く解らずに飲んでいる人がいるのではないでしょうか。お茶の価格差と味の差もわかりにくいのでが。スーパーで茶葉を価格で選んでいる人を高級茶に向かわせる事ができれば…。お茶が日常から離れてしまった今、消費者を取り戻すのではなく、新規顧客を呼び込むことが必要かと思いますが…。例えば内容量を少なくして買いやすくするのも良いかも知れません。発泡酒に350mlと500mlがあるように。発泡酒のように量は違っても中身の単価は、ほとんど変わらないようにして。言うのは簡単ですが難しいですね。

ブランディング – wikipedia

 

葉っピイ向島園の番茶紅茶

藤枝市瀬戸ノ谷の葉っピイ向島園さんの「番茶紅茶」です。

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藤枝市中心街から瀬戸川沿いを車で20分ほど山側に上ったあたりが瀬戸ノ谷地区です。

そこに向島園さんがあります。向島園さんは農薬・化学肥料を一切使わない有機栽培のお茶を生産しています。また、有機認証にも取り組んでおり、この「番茶紅茶」は有機JASとアメリカのUSDAオーガニック認証を受けています。

「番茶紅茶」と名前のように秋に摘み取る4茶・秋冬番茶を使用しています。低カフェインのお茶になります。

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香りは、弱いのですが水色、味は良いです。番茶のようにサッパリとした仕上がりになっています。食事にも合います。リーズナブルな価格なのでお買い得です。欠点は、茶葉の見た目が良くないです。味には関係ないので気になさらずに。

以前、向島園さんの工場を見学させて頂いたとき、工場内のある地点で気の強いパワースポットのような場所がありました。気のせいかとも思っていましたが、実際に縄文土器が発掘されています。そのような場所で作られた有機紅茶なので、パワーをもらえると思います。

先日の静岡新聞に向島園さんの記事が掲載されていました。わりと早く記事が削除されてしまうようなので転載します。

スウェーデンの雑誌記者が茶園を訪れ取材した=藤枝市瀬戸ノ谷

 藤枝市瀬戸ノ谷の茶園に20日、スウェーデンの雑誌記者が訪れ、茶の生産や茶葉の製造工程を取材した。
 日本の食文化を記事にするという記者のマルクス・フェレデアムさん(39)と、カメラマンのナジャ・コールソンさん(49)。この茶園を管理する向島和詞さん(27)の案内で栽培現場を回り、茶葉の形や摘み方、年間の摘採計画などを細かく聞いた。
 隣接する工場では、茶葉を蒸したり揉(も)んだりする荒茶の加工作業について説明を受けた。マルクスさんは「日本茶は個人的にも気に入っている。茶園も美しい」と感心した様子でメモを取った。

新茶初取引なのに「上級茶の取引伸びず」で思うこと

15日、静岡茶市場では新茶初取引を迎えた。最高値は清水両河内産の「やぶきた」で1Kg 88.800円の値を付けた。上級茶の注文が伸びずにいる。

本当は上級茶が売れると良いのだけれども、なかなか売れない。高くて売れないのか、魅力がないのかわからないが、売れない。ワインのヌーボー(新酒)のように、みんなが興味を持ってくれると良いのだけれど。「今年の新茶はどうだろう?」「あの地域の出来が良いようだ」などの声は聞こえてこない。

「色々とやっている」と怒られそうだが、お茶には、地域で特色を出すとかの仕掛けが必要なのだろう。

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先日、磐田市のビジネスホテルに泊まる機会があった。朝食のビュッフェには、お茶とコーヒーが置いてある。コーヒーはコーヒーサーバーで、お茶は、急須で淹れるセルフサービスだった。お茶は、粉茶である。抽出に時間が要らないので合理的かとも思うが、やっぱりそんなものかと思った。全国の人が集まる茶どころのホテルなのだから、茶業組合とか、公共機関が普段使いで上質のお茶を用意しても良いのではないかと思う。最近は、お茶を全く飲まない人も多いのだから、飲んでもらわないことには、消費は増えてこないのだから。

あと、ホテルでの、結婚式や宴会の席に出るノンアルコールの飲み物と言えば、ジュースとウーロン茶が主流なのだが、お酒を飲まない人が宴席で飲むには少し寂しい。ノンアルコールビールは美味しくない。美味しい冷茶があればと、いつも思う。茶処のおもてなしとしては、シャンパン色の冷茶を飲みたい。

さて、今年の新茶はどうだろうか?興味を持っている人も少しはいる。

 

もっとも早い新茶初取引とピークを過ぎつつある藤の花

「静岡茶市場では、新茶の初取引を4月15日に開くことを決めた。前年より8日早く茶市場設立以来、最も早い」

早いことは、良いことなのでしょが冷蔵庫が発達してから、新茶の有り難味がなくなってしまいました。昨年の新茶を飲んでも一般の消費者には違いがわからないでしょう。

果物には、まだ季節感がありますが、新茶は、季節感がなってしまいました。せめて初鰹くらいの季節感が欲しいですね。

お茶の葉は、かなり成長しています。

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十分、茶摘ができそうです。

今年は、桜の開花が早かったのですが、街中の花がいっきに咲いたようで、街は花で溢れています。そんな中、つつじが咲いているのに驚いたのですが、藤が満開を過ぎ、散り始めています。急に暖かくなったなったせいなのでしょうが、一説には、太陽活動と宇宙からの放射線も関係しているようです。

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藤枝市の蓮花寺池公園では、毎年恒例の藤まつりが4月20日~5月6日まで開かれます。

先週末の桜まつりも桜が散った後でしたが、藤まつりが始まった頃には藤の花は散ってしまうと思われます。蓮花寺池は見てないのですが近所の藤の花が上記の写真のような状態です。純粋に、藤の花を見に行くのでしたら今週中がお勧めです。

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長生きする為の5つの生活習慣

5 DAILY HABITS FOR LIVING LONGER

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長生きする為の毎日の5つの習慣

1、多彩な果物と野菜の摂取

2、長鎖オメガ3脂肪酸の摂取(DHA、EPA)

3、毎日のデンタルフロス

4、緑茶をたくさん飲む

5、もっと体を動かす

簡単に言うと、毎日や野菜と果物と青魚を食べ、歯周病にならないように口の中を清潔に保ち、緑茶を3杯から5杯飲み、朝散歩に行くことです。

自分なりの感想ですが、農家と魚屋は長生きの人が多いと思います。魚屋のおじさんは90歳を過ぎても元気ですし、お茶を作っている兼業農家のおじさんも90歳近いのにピンピンしています。歯周病から体調不良になりますし歯を磨かないと癌や認知症になるリスクが高くなるとも言われています。緑茶には殺菌作用があるので食後に飲むと細菌をブロックします。

食後にはお茶をどうぞ!

 

なかやす園の紅茶

お茶の産地で有名な静岡県島田市伊久美。JR島田駅からバスで40分ほどの山間の地区です。伊久美地区の紅茶は、斎藤さんの伊久美工夫(いくみこんふ)が有名です。同じ伊久美でも「なかやす園」さんは正統派緑茶で有名です。緑茶のバイブルと言われている故波多野公介氏の著書の中で一貫して「なかやす園」の在来種を推奨されています。

その「なかやす園」の紅茶です。名前もシンプルに「紅茶」です。

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シンプルでおいしい紅茶です。確証はないですが在来種から作られた紅茶だと思います。

和紅茶の原点のようなシンプルですが、しっかりした味、香りを兼ね備えている紅茶です。和菓子に合う紅茶です。また食事にも合い、口の中をさっぱりさせてくれます。

在来種の栽培面積は年々減少しています。お茶の木が、その土地の気候風土に合うよう代を重ね変化してきたのがその土地の在来種です。野菜の在来種と同じように、芽が出るのが不揃いであったり、遅かったりするので、生産性の高い「やぶきた」種などに取って代わられてしまいました。在来種は、扱いにくく、下級品のイメージが付いてしまいましたが在来種こそ本来高値で取引されるべき茶品種ではないでしょうか。

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緑茶、コーヒーで脳卒中リスク減はなぜか

緑茶、コーヒーで脳卒中リスク減=8万人追跡調査-循環器病センター

緑茶やコーヒーを飲むと脳出血や脳梗塞を発症するリスクが飲まない人に比べ緑茶では20%、コーヒーでも20%減った。また緑茶もコーヒーも飲まない人と比べると脳卒中のリスクが3割低下した。これは8万2千人を10年以上に渡り追跡調査した結果である。

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緑茶やコーヒーには、血管を保護する物質や血糖値を抑える物質が含まれている。それは何か。抗酸化作用が高いフラボノイドである。フラボノイドはポリフェノールの一部であり、お茶にはカテキン、コーヒーにはクロロゲン酸などが含まれている。フラボノイドは、大豆に多く含まれるイソフラボン、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニンなどがある。ポリフェノールは、たくさんとっても体内にたまらないため、ききめは2~3時間しかない。

フラボノイドはどの植物にも含まれているが多く含まれているのは、茶の木から作られたものである。玉露、抹茶が特に多いようである。ポリフェノールは、効き目が2~3時間しかないとのことなので、朝は納豆と味噌汁、10時の休憩にはコーヒーを飲み、昼には豆腐料理を食べ、3時には抹茶ケーキと紅茶を飲み、夜には赤ワインで乾杯。デザートにはブルーベリーを食べ、団欒に玉露を飲むのが健康にはよさそうだ。食中、食後のさっぱりしたお茶も忘れずに。

 

都会と同じやり方では地方は復活しない

都会の本社の論理では地方の小売は蘇ることができない。

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とある地方スーパーの衰退

 

消費者と小売に関するツイートの触発されたので、スーパーで魚屋やってた頃の話をする。私が魚屋として働いていたのは九州某県にある地場スーパーで、当時は生鮮食料品についてはなかなかいい評価を頂いていた。大儲けはしてなかったが堅実に稼いではいたはず。割と高級路線で、支店が70くらいあった。で、正月三が日は休みだった。九州ではおせち料理に鰤が欠かせないので、年末は鰤が売れる。飛ぶように売れる。よって年末の水産物売り場は戦場だった。夜が明けないうちから日暮れまで、ひたすらあらゆる鰤商材を売り続ける。私が働いていた頃くらいから、スーパーは年中無休というのがトレンドになりはじめた。そんな矢先、うちのスーパーは売却された。業績が悪かった訳ではない。親会社の百貨店が潰れかけていて、唯一優良物件だった子会社を売り飛ばしたのだ。買収したのは、全国展開していて誰でも知ってるスーパーS社だった。ただ度し難い赤字と売り上げ不振に苦しんでいて、世界最大の小売業者W社に買収された直後という会社だった。本社が赤羽にあったので、当時我々はS社を「赤羽」と呼称していた。九州の地場スーパーの魚屋から見れば、赤羽の連中は何も分かっていない馬鹿揃いだった。その割に、プライドはやたら高く「現場は本社の指示に従ってればいい」という態度を絶対に崩そうとしなかった。それはともかく、赤羽は24時間365日常時営業とかいうことを言い出した。買われた側としては抵抗できなかったが、しかし末端の魚屋が考えてもこれは何の利も無い施策としか思えなかった。少なくとも365日店が開いていれば、年末商戦の意味は薄れる。売り上げだって下がるだろう。その分正月に売れるかといえば、恐らくそうではあるまい。むしろ正月に発生する廃棄分の方が多くなりはせんか。赤羽は「年末商戦の売り上げは従来通り、正月も新春特売掛ける」というような矛盾した事を平気で押しつけてきた。んなこと出来る訳がない。結果従業員は疲弊し、廃棄はかさみ、売り上げは落ち、利益も落ちた。お客さんも店も誰も得をしなかった。それからしばらくして私はそのスーパーを辞めて東京に出てきたが、帰省してかつて働いた店を見る度に悲しい思いをしている。かつてはお客さんから一定の評価を得ていたものを、今じゃ出来損ないの安売りスーパーとなってしまった。お客さんが何を望んでいたのか、まるで見えていなかったのだ。生鮮スーパーに常連として足を運んでくれるお客さんは、別に24時間365日営業なんて望んではいない。それよりもいい品をそれなりの価格で買えること、従業員の対応が良いことを望んでいたろう。しかし会社の偉い人たちは勝手にお客さんの要望を忖度し、大失敗した。小売が苦境に陥っているのは、お客さんの我が儘のせいとばかりは言えないだろう。お客さんの欲求を見当違いに斟酌して訳の分からない事を重ねた結果なんじゃないのか。まあ、会社側からすれば努力は無駄ではないのだ。人件費はタダなだもの。まあそこまで言わずとも、当時会社の偉い人からこんなことを聞いたことがある。「いや、お前の言うことは分かる。恐らく益率は下がるだろう。コスト考えると結果として損になるかもしれない。しかし、営業すれば取れる売り上げがそこに転がっているなら取らなければならない、と考える奴もいるんだ」 帳簿見ながら損益計算しようという発想はそこには無い。というか、そういう理詰めの考えを「そんなこと言う前になんで正月営業しない。営業機会逃しておいて言い訳するな。そんなことはやれるだけのことをやってから言え」と一蹴する世界だった。そりゃ、苦しくもなるわな。あの時期、「日本の伝統と従業員の生活の為、うちは正月営業はしません」とでも広告打った会社が一つでもあったのだろうか。どっかやればよかったのに。

 

昨年の大晦日の夕方、スーパーでの叩き売りを期待しながらて行ってみたが、何も安くなっていない。「年中無休で明日の正月元旦から営業するから安売りする必要も無いのだろう」と単純に思っていたが、スーパー側にも利益はあまりないのだろう。「一年の計は元旦にあり」ということで元旦には、極力お金を使わないようにしている。日常の便利さと引き換えに楽しみをなくしてはいるのではないか。正月気分が最近は薄らいだようだ。元旦くらいは、お客様の楽しみと、従業員の為にも休んだ方が良いのではないかと思う。

 

山形県酒田市のデパート「清水屋」は都会の親会社が撤退したあと、地方には地方のやり方があることを証明した百貨店である。このような例を参考に地方の中心商店街も復活できると思う。

 
静岡県では、静岡市と浜松市がよく比較される。静岡市は中心街の商店街が残っており、浜松市の中心街の商店街は壊滅的である。違いは何か。静岡市街地はコンパクトだが浜松市は商店街が郊外に広がり店舗が点在している。浜松市には郊外のショッピングモールが数多くあるが静岡市にはあっても徒歩圏内(だいぶ辛いが)である。最近静岡市では町の外れにあった映画館街が引っ越したことにより周辺の七間町の人通りが減りシャッターが下りた店舗が増えた。さらにコンパクトな街になろうとしているようだ。浜松市はモータリゼーションの波に乗ったが静岡市は取り残された。

良い悪いは別にしても車社会の波に押され、シャッター通り商店街は増え、郊外のショッピングモールも増えていった。車社会の光と影と言ってしまえばそれまでだが必ず生活弱者がしわ寄せを食ってしまう。